僕のフィールド観察日記📗

身近に生息する両生類・爬虫類の観察、撮影をしています。

生きる意味を失ったイシガメのジョニー(外来種の脅威について考える)

 先日、近所の小川でニホンイシガメ(Mauremys japonica)の両前肢・尻尾(肛門、生殖器)欠損個体を発見した。発見場所は小川の岸。オスのイシガメで生後1、2年くらいの個体と思われる。甲長は10cm程度の純血のニホンイシガメであった。f:id:Haruto210309:20190420001019j:imagef:id:Haruto210309:20190420001026j:image 学名にjaponicaと付くように、ニホンイシガメは日本固有種であり、世界中どこを探しても日本にしかいない日本の貴重な生き物である。近年、乱獲が多くなりペットとして1万円前後で取引されるなどして数が減少傾向にある。そのため環境省は準絶滅危惧(Encyclopedia of Life)に指定し、2013年にはワシントン条約附属書IIに掲載された。ニホンイシガメと聞いて聞きなれない名前だと思うが聞きなれた名前で言うと「ゼニガメ」と呼ばれていた種類だ。現在、ゼニガメとして売られているのは外来種であるクサガメ(Mauremys reevesii)であるが、いつ、どのようにして名前が入れ替わったのかは定かではない。ニホンイシガメの最大の特徴が1つある。ニホンイシガメは爬虫類の中でも一、二を争う「グルメ家」だ。その理由として、春に冬眠から目を覚ますと川の中でエビやミミズなどを食べる。田んぼが始まる時期である5月、イシガメたちはエサを求めて田んぼへ向かう。イネに群がる昆虫類や両生類、貝類などを食べに来るのだ。秋になると田んぼも終わりを迎える。イシガメたちはまたもや大移動。目指す先は山の中。山に自生しているヘビイチゴや落ちているアケビなどを食べるようになる。秋も終わりを迎える頃、イシガメたちは再び人里に戻ってくる。お目当ては畑の野菜だ。イシガメたちはトマトなどを好んで食べる。あまり知られていないこの真実。いざ知ると面白い。

 そんなイシガメたちが今や絶滅の危機に瀕していることは前頭にもお伝えしたように紛れもない事実だ。しかし、乱獲が原因だけではない。外来種クサガメミシシッピアカミミガメ(Trachemys scripta)の侵略である。イシガメとクサガメの学名に注目すると分かるのだが、どちらもMauremysと記載されている。この意味はイシガメとクサガメは別の種類だが、近い仲間であることを示している。察しの良い人は分かったであろう。この2種類は交雑するのだ。イシガメ×クサガメまたはクサガメ×イシガメとして生まれた個体が現在日本各地で見つかっている。この交雑個体をハイブリット個体またはウンキュウと呼ばれる。(以下ウンキュウと呼ぶ)ウンキュウは、顔はイシガメに近いが、甲羅は3本のキールがあるクサガメの特徴、顔はクサガメに近いが、甲羅は黄褐色のキールのないイシガメの甲羅。など主に2種のパターンがある。ハイブリット?人間で言うハーフってことでしょ?カッコイイじゃん!と思う方もいるかもしれない。しかし、それが許されるのは人間だけなのだ。長い時間をかけて生き物たちはお互いに生息地を分けて(すみわけ)トラブルなく、共に無駄な干渉をせずに生きてきた。しかし、人間の手により外来種を野に放ったことで自分よりも強い個体が自分たちの住処に突然現れ、望まない妊娠をし、最終的には独占、占領されてしまう状態になってしまっている。ミシシッピアカミミガメは交雑はしないものの、住処を奪う事でイシガメを絶滅に追いやった。人間で言うところの戦時中の日本に起きた事と同じなのだ。それまでいなかった見知らぬ外国人が突如として現れて村や町を破壊していく。住む場所を奪われ、抵抗すれば乱暴をされる。イシガメや日本固有種たちは人間では無いからと言ってこんなことは果たして許されて良いのだろうか?良いはずがない。外来種は日本の自然においていてはいけない存在なのだ。日本やオーストラリア、東南アジア諸国は四方八方を海に囲まれた海洋国である。海洋国の特徴としては大陸と繋がっていないため、独自の進化を遂げた固有種たちが多く生息している。しかし、外来種が放たれると逃げる場所がないのだ。例えば今、奄美大島で議論になっているノネコを例にあげると野生化のネコは全体でアメリカでは年間37億羽の鳥類と207億匹の小型哺乳類を捕食しているという結果が出た。島国でネコを放つとどうであろうか。アメリカは大陸で繋がっているが、島国で放つと一瞬にして在来種は尽きてしまう。今回のイシガメを襲った犯人は北米原産のアライグマである。アニメ(ラスカル)のブームが日本で起こり、多くのアライグマが輸入された結果、興味本位で買った人々が徐々にその生態に気がつき始め、野外に離してしまった。

 なら、襲ったりする犯人のアライグマ、ネコ、オオクチバス(オオクチバス)、ブルーギルが悪いのか!と思うかもしれない。しかし、僕はそうは思わない。1番悪いのは人間である。人間以外の生物の間で戦争を起こしたきっかけを作ったのは我々であり、この先ずっとその責任を負うことが使命であると僕は思う。人間のしたことがどれだけ他の生き物に迷惑をかけているのか、「あの人は逃がしたよ」では無い。それを止めなかった人もそれ以外の人も一人一人が外来種問題に目を向けるべきである。現在、地球上で1番種類の多い生き物は何か。ゴキブリ?1匹でたら100匹いるとかいないとか騒がれるあの昆虫?ゴキブリは世界中に1兆匹いるとされている。これを聞いて絶対に絶滅しないと言いきれるだろうか?1兆匹いる中でゴキブリは4000種類存在するとされている。1兆を4000で割ると25000匹。1種類につき25000匹しかいない。対して人間は、1種類(Homo sapiens sapiens)だけで70億を超える。最も地球上で1番多い種は人間なのだ。また、5億年前に誕生した1番新しい生き物のであることから全生物の中の後輩にあたる。そんな我々がこれ以上自然に迷惑をかけて良いのであろうか?外来種問題について1人でも多く理解を深めて欲しい。

 捕獲したイシガメは自宅に持ち帰り、保護したが2日後に死亡した。このイシガメと出会った事で、改めて外来種が在来種に及ぼす脅威を感じることができたことは、非常に今後の課題や糧、経験になると共にイシガメには感謝の言葉しかない。保護といっても何も準備をせずに行き先で拾ってきたものを持ち帰っても返って死へのリスクを上げるだけなのかもしれない。1番は元いた場所にいることが大切であり、外来種を在来種に触れされないことが1番の課題である。僕自身はテレビで話題になっている「池の水抜いてみた」などで外来種を駆除しているが、正直なところ意味がないと思っている。抜いて外来種がいなくなったらまた釣りがしたいがために離しに来ればいい。そんな考えの人がいるからだ。現に、ため池10個の水を抜いて外来魚を駆逐した後に水を戻して1ヶ月放置し、再び水を抜くと外来魚が再び発見されるというデータがある。これは言うまでもなく、人々が放流しに来ているのだ。そのため減らしても意味が無い。そのため僕は外来種がいてもまずはこれ以上増やさないことが大切だと思っている。外からの放流をシャットアウトすることが出来てから駆逐するべきと考える。外界からシャットアウトできない限りはこの問題は解決できない。

 長文になったが、外来種の見方が変わったのであれば嬉しい。今後どのようにして変えていくかは一人一人が考えていく必要がある。